セス・ゴーディンはこう考える!型破りなマーケティング術

あなたの考えるマーケティングってどんなイメージですか?私は、マーケティングに決まった手法はないと思っています。

セルジオ・ジーマン、ピーター・ドラッカー、フィリップ・コトラー・・・。

これだけ有名なマーケティングの専門家たちでも、マーケティングについては異なる解釈をしています。つまり、マーケティングとは人によって解釈や方法が違うということです。

型破りで有名なマーケティングの専門家にセス・ゴーディン氏がいます。

今回は、そんなマーケティングの専門家であるセス・ゴーディンを紹介します。

セス・ゴーディンについて

セス・ゴーディンとは

セス・ゴーディン(Seth Godin)は、マーケティングをメインに著作活動を行う専門家です。

元Yahoo!の副社長を務めたことでも有名で、型破りな発想を得意とします。

代表作である『「紫の牛」を売れ!(原題: Purple Cow: Transform Your Business by Being Remarkable.)』は世界的なベストセラーとなっています。

セス・ゴーディンの著書

セス・ゴーディンの翻訳されている著書は次の通りです。

  • 『金融革命―電子マネー時代への警鐘』白田佳子 訳
  • 『パーミションマーケティング―ブランドからパーミションへ』阪本啓一 訳
  • 『バイラルマーケティング』大橋禅太郎 訳
  • 『セス・ゴーディンの生き残るだけなんてつまらない!―「ズーム」と進化がビジネスの未来を拓く』高遠裕子 訳
  • 『「紫の牛」を売れ!』門田美鈴 訳
  • 『オマケつき!マーケティング』沼崎冬日 訳
  • 『マーケティングは「嘘」を語れ!―顧客の心をつかむストーリーテリングの極意』沼崎冬日 訳
  • 『ダメなら、さっさとやめなさい! ~No.1になるための成功法則~』有賀裕子 訳
  • 『常識破りの組織に変える 33人の否常識』宝利桃子 訳
  • 『「新しい働き方」ができる人の時代』神田昌典 訳
  • 『パーミッション・マーケティング』谷川漣 訳
  • 『「見えてる人」になるたった1つの法則』阿部川久広 訳
  • 『トライブ 新しい“組織”の未来形』勝間和代 訳
  • 『THIS IS MARKETING ディスイズマーケティング 市場を動かす』中野眞由美 訳

セス・ゴーディンから学ぶマーケティング術

ここからは、マーケティングに対してセス・ゴーディンがどのように考え、何を提唱してきたかを紹介していきます。

セス・ゴーディンの考えるマーケティングとは何か

セス・ゴーディンは、自身の著書である『THIS IS MARKETING ディスイズマーケティング 市場を動かす』でこう語っています。

マーケターは、つねにアイデアが人から人へ広まる手助けをし、変化を起こしながら仲間を巻き込んでいく。消費者の生活をより良くし、その人が望む自分になるのを手伝うことができれば、あなたは立派なマーケターだ。


THIS IS MARKETING ディスイズマーケティング 市場を動かす セス・ゴーディン(中野眞由美[訳])

この言葉から、「今まで考えられてこなかった発想を広め、人々が望むものを与える事で、人々の生活を良くすること」がセス・ゴーディンの考えるマーケティングと言えます。

マーケターは「感情」を売るのが仕事

人は、物や合理的な成果が欲しいのではなく、「安心感」や「達成感」、そして「敬意」といった感情を満たされたいのです。

「なぜ、ハイブランドの服を欲しがる人がいるのか?」を考えてみてください。

服を着る本来の目的は、裸の状態を隠すことにあります。合理的に考えれば、裸の状態を隠せれば良いので、安物の服でも良いはずです。

しかし、安物の服で満たされる人もいれば、ハイブランドの高価なものしか買わない、といった人もいます。

これは、高価な服を着ている事で、相手から見られた際に「敬意を得たい」という感情を満たしたいためです。

このことからセス・ゴーディンは、マーケターは「感情」を売るのが仕事だと言っています。

ターゲットは絞れ!

大衆が望む普遍的なものを追い求めると、つまらない人間になってしまいます。何故なら大衆が満足するものは、必然的に妥協と一般化が求められるからです。

これを回避するにはどうすれば良いのか。それは、これから成長しそうな「小さな市場」をターゲットとして捉え、限られた人だけに影響を与えれば良いのです。

あなたがマーケティングを行うのは全ての人にではなく、ターゲットとしている限られた人たちに向けて行うべきなのです。

ポジションを決める

ものが溢れかえる世の中において、「何かを選ぶといった行為」は消費者にとってストレスとなっています。

どれもこれも似たり寄ったりで、選択する意味があるのだろうか、とみんな考えているでしょう。

だから、通販サイトの口コミで評価の高い品物を思考停止の状態で購入してしまうのです。

しかし、そこに「一部の人にフルコミットした商品」があった場合は、当然ながら一部の人に選んでもらえる確率が上がります。

だから「一般受けを狙った商品」ではなく、「一部の人に受ける商品」を目指して、商品のポジションを決めてください。

マーケターが引っかかる3つの罠に気をつけろ!

セス・ゴーディンは、著書『THIS IS MARKETING ディスイズマーケティング 市場を動かす』で、マーケターの多くは3つの罠に引っかかりやすいと言っています。

1つ目は、人が「ほしいもの」と「必要なもの」を混同しているということ。人が必要としているものは、「空気」や「水」といった生きる上で欠かせないものであり、ほしいものはそれ以外です。しかし、人は必要なものが常に手に入る環境にいると、「ほしいもの」を「必要なもの」であると思い込んでしまうのです。

2つ目は、人は自分が「ほしいもの」をよく知っているが、それを手に入れる方法を考えるのが苦手だということ。今までの経験則から方法を見つけようとし、新しい方法を考えないのです。

3つ目は、誰もがみんな、同じものを欲しがっていると思い込んでいるところです。人はあなたと同じものを欲しがっていない。新しいもの好きは、これまでに無かったものを欲しがり、流行に疎い人はこれまでと変わらないものを欲しがる。重視するポイントや、好きなデザインはみんな違うのです。

安けりゃ良いってもんじゃない

安ければ良いってものではありません。

美容院で例えてみましょう。1,000円カットと10,000円のカットの違いはなんでしょうか。

技術の違い?カットする時間の長さ?

いいえ、これらの違いは、他と違うものを演出できているかどうかです。

先述の通り、ターゲットとしている限られた人たちに向けられたものか、他の店舗では味わえない希少性があるものか、顧客の感情をどう動かすかです。

合理的に考えれば、1,000円カットのコストパフォーマンスは最高です。でも10,000円のカットの美容院に行く人もたくさんいるのです。この美容院でしか味わえない髪を切られている時に流れる音楽だったり、美容師のトーク力だったり、おしゃれな場所で髪を切っているという満足感だったり、それら他の店舗とは違う演出で1,000円カットの10倍の料金設定が可能となるのです。

では、このおしゃれな美容院が仮に1,000円だったとしたら(経営的には無理ですが)どうかと言うと、顧客は減る=利益は減ると思います。

何故なら、顧客は高いお金を払って髪を切っていることに満足感を得たいからです。安くて良いサービスの美容院は大衆向けであり、高級志向の自分には相応しくないと去っていくのです。高いお金を払うことも顧客にとって満足を得る要素の一つなのです。

人は同調圧力に弱い

人は、「自分と同じステータス」の人たちと同じ行動をとります。何故なら「自分と同じステータス」の人たちと違う行動をとるのは抵抗感があるためです。

例えば、日本人のほとんどは寿司を食べます。寿司に対して「うげぇ」とか「食べ物じゃない」とか思う人はいないですよね。

では、コオロギはどうでしょうか。コオロギを抵抗なく食べられる日本人は多くないはずです。

この寿司とコオロギの違いはなんでしょうか。

それは、「自分と同じステータス」の人たちが寿司を食べるか、コオロギを食べるかの違いなのです。

日本人は物心がつく前から寿司を食べる文化に触れているため、大人になっても抵抗なく寿司を食べることができます。一方、コオロギを食べる文化はありません。

つまり「自分と同じステータス」の人たちと同じ行動をとりたがるという事なのです。

現にコオロギは日本では食べる文化はありませんが、中国や台湾、ベトナムなどでは割とスタンダードな食材だそうです。

新しいもの好きを探せ

下図はイノベーター理論の指標です。

左からイノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードと並んでいます。それぞれの意味は次の通りです。

イノベーター(革新的採用者)・・・新商品を誰よりも早く購入する層。商品の品質に関係なく、革新的であればすぐに採用する。

アーリーアダプター(初期採用者)・・・流行に敏感で革新的なものを好む層。発信力が高く、一般消費者への影響力が高い。

アーリーマジョリティ(前期追随者)・・・一般勝者の中で早めに行動する層。新しい商品に対しては慎重に行動するが、話題になっているものは迷う事なく購入する。アーリーアダプターの影響を受けることが多く、流行に遅れる事を恐れている。

レイトマジョリティ(後期追随者)・・・一般勝者の中で遅めに行動する層。新しい商品に対しては消極的であり、周囲が採用して問題がないことを確認してから採用することが多い。

ラガード(採用遅滞者)・・・変化を嫌う層。例えるなら現代においてもガラケーを使うような人たち。新しい商品に興味がなく、できれば現状を維持したいと考えている。

この中でセス・ゴーディンは、イノベーターやアーリーアダプターが欲しがるようなものを考えるように言っています。

何故ならイノベーターやアーリーアダプターなどの新しいもの好きは、革新的なものへ対して探究心があり、積極的に関わってくれるからです。アーリーマジョリティ以降の層は現状のものに満足しており、そこに向けてマーケティングをする行為は、時間の無駄なのです。

戦術と戦略と目標の違いを理解する

戦略とは戦術を達成するための何百、何十とある手順の事です。戦略に必要ないと判断した戦術は、すぐに変えても構いません。

一方、戦略はもっと抽象的であり、戦術によって成立し、目標達成のプロセスとして立てるものです。

そして目標とは、戦略が上手くいった先に置いておくべきものです。

これをコカ・コーラで例えると、次のようになります。

  • 目標:もっとたくさんの人に、もっとコカ・コーラを飲んでもらおう
  • 戦略:広告を大量に流して、誰もがコカ・コーラを飲んでいると大衆に信じ込ませる
  • 戦術:広告の内容自体が戦術のため、戦術が変わるとともに内容も変化した

安売りは顧客に変化を与えない

サービスや商品を安売りすることは、顧客に変化を与える事を約束しない行為です。

安いと言うことは、改善や新機能といった変化に投資しない事であり、ラガードに対してのみ商売をしていると言う事です。

誰もが安売り競争に向かってしまうのは、一番売りやすい方法だからです。思考停止して安くして、新技術への投資もしない。これほど楽な売り方はありません。

あなたが相手にすべきはイノベーターやアーリーアダプターです。ものを安く売ることは誰にでもできることです。

トライブをつくる

トライブとは、一緒に活動し自分が導いていく仲間のことを指します。トライブをつくるには、人々に「自分と同じステータス」だと思わせれば良いのです。

そのために「自分のストーリー」を語り、あなたと同じステータスの人たちに共感してもらうのです。その人たちがトライブとなり、力となってくれます。

最後に

以上がセス・ゴーディン氏の考えであり、提唱してきたマーケティングとなります。

興味が湧いた方は、セス・ゴーディン氏の著書をぜひ、読んでみてください。

どれも素晴らしい著書ですが、その中でも『THIS IS MARKETING ディスイズマーケティング 市場を動かす』がオススメです。